選ばれる美容”の時代に—最新調査から見る、これからのエステ&アイビューティー

2025.07.23

 

 ホットペッパービューティーアカデミー研究員、田中公子の『データで見る美容業界』- 第1回 

 

選ばれる美容”の時代に—最新調査から見る、これからのエステ&アイビューティー

 

\エステティックジャーナルWEB版、創刊おめでとうございます!/

これまでアイビューティーに特化した視点でお届けしてきた当コラムも、今回からはエステやネイル、リラクゼーションなど、美容全般へとフィールドが広がります。そんな中でホットペッパービューティーアカデミーから発表された「美容センサス2025年上期」(2025年6月発表)のデータには、サロン経営に役立つ“消費者のリアル”が満載です。今回は、特に注目すべき5つのトピックをピックアップしながら、これからのサロン運営のヒントを探っていきます。

 

文・作表 田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)

 

<目次>
1.  アイビューティー市場が2年連続で2桁成長!
2.  20代女性の約3人に1人がアイサロンを利用
3.  脱毛市場が縮小する一方、フェイシャルは高単価層の支持を獲得
4.  美容室市場は5年で最大に!利用単価アップの背景とは?
5.  ネイルサロンの“毎月通い”層が最多に
6.  “選ばれる美容”の時代に—これからのサロン経営のヒント

 

  1.  アイビューティー市場が2年連続で2桁成長!

 

「まつげ」や「眉」など目元に特化したサービスを提供するアイビューティーサロンの市場は、2025年上期で前年より17.4%増の1384億円に成長しました。2年連続で2桁成長という快進撃は、美容サロン全体でも際立っています。

 

背景には、アイビューティーサロンの利用率(過去1年以内に利用した人の割合)が年々増加していることが挙げられます。女性は2021年の7.1%から2025年には11.8%まで上昇し、男性も同期間で2.5%から4.6%と倍近くに増加しています。
男女ともにコロナ禍以降、“目元美容”へのニーズが拡大傾向にあることや、「美容の時短」ニーズに応えるメニューの進化も利用を後押ししているでしょう。

 

 

  2.  20代女性の約3人に1人がアイサロンを利用

 

アイビューティー市場では、とくに女性のサロン利用率が全年代で上昇しており、目元美容が“特別なケア”から“日常のルーティン”へと定着しつつあるのが見て取れます。今やアイメニューは、幅広い層が気軽に取り入れる「生活美容」の代表格と言えるかもしれません。

さらに20代女性の1年以内のサロン利用率は、29.0%。日常のルーティンとして完全に定着しつつあります。

デザインもボリューム感のあるまつげデザインから、自然な仕上がりまで、提案力が問われる時代。カウンセリングの質や、継続利用しやすい仕組みが経営の鍵になりそうです。

 

 

  3.  エステは脱毛市場が縮小する一方、フェイシャルは高単価層の支持を獲得

エステサロン市場は2025年上期で前年比588億円減の3,360億円とやや縮小傾向。その要因のひとつが脱毛分野の落ち込みで、2021年からの4年間で市場規模は672億円も減少しています。背景には、医療脱毛やセルフ脱毛などの選択肢が増えたことや、一部大手サロンの倒産など、業界構造の変化があるようです。

 

一方で、フェイシャルやボディ・痩身分野では、安定的な需要が見られ、特にフェイシャルは1回あたりの利用金額が1万円以上のシェアが上昇傾向にあり、「高単価でも通いたい」という層に支持されている様子。「全ての美容にお金をかける」のではなく、「自分にとって価値があるものに絞って投資する」—そんなメリハリ消費が広がっている印象です。

 

 

  4.  美容室市場は5年で最大に!利用金額アップの背景とは?

 

2025年、美容室の市場規模は1兆3884億円と、ここ5年で最も大きな規模に成長。前年からは342億円増(+2.5%)と着実に拡大しています。

 

この成長には、1回あたりの利用単価の上昇が大きく貢献しており、女性は7,668円、男性は4,879円と、いずれも5年間で最高額を更新。

なぜ利用金額が上がったのか?
物価高の影響はもちろんありますが、それだけではありません。高単価メニュー(例:縮毛矯正)や、アイメニューなどを組み合わせて提案する「クロスセル」の広がりが、客単価アップを後押ししているのです。

 

これはアイビューティーやエステにも応用できるヒント。たとえば「まつげ+眉」や「フェイシャル+デコルテ」など、ニーズに寄り添ったセット提案は、価格以上の“価値”を感じてもらう武器になります。サロンメニューを見直す際は、クロスセル前提の導線設計をしてみても良いかもしれません。

 

 

  5.  ネイルサロンの“毎月通い”層が拡大

 

ネイルサロンの市場は、2025年で1,455億円と過去5年で最大となり、2022年から3年連続の成長を記録しました。

 

注目すべきは、「12回以上/年」通っている高頻度利用者の割合が27.2%と、ここ4年で上昇していること。前年からも2.9ポイント増えており、物価高の中でも“通い続ける価値”を感じている層が確実に増えているのが分かります。

爪は、ふとした瞬間にいつも自分の目に入ります。日常の中で一番目に触れる部分だからこそ、心地よい状態を保ちたくなるのは自然なことといえるでしょう。

 

 

  6. “選ばれる美容”の時代に—これからのサロン経営のヒント

 

「美容センサス2025年上期」の調査結果を通して見えてきたのは、「全ての美容にお金をかける」時代から、「価値を感じるところに投資する」メリハリ消費へのシフトです。
脱毛は選択肢の多様化で市場が縮小傾向にある一方、フェイシャルやネイル、アイビューティーなどはむしろ堅調な増加や拡大傾向にあります。

そして、ヘアだけではなく、まつげ、眉、フェイシャル、ネイルなども「日常ケアの延長線」になってきた今、重要になるのは「提案力」と「通いやすさ」。
お客さま一人ひとりの目的や生活リズムに寄り添った、継続しやすいメニューやプラン設計こそ、これからのサロン運営の勝ちパターンとなりそうです。

「選ばれるメニュー」と「選ばれる価格設定」、そして「選ばれるカウンセリング」。
この三本柱を意識して、貴サロンならではの“価値”をしっかり伝えていきましょう。

 

 

【データ出典】
ホットペッパービューティーアカデミー『美容センサス 2025年上期』
調査期間:2025年1月27日~2月12日
調査対象:全国の人口20万人以上の都市に居住する15〜69歳の男女13,200人(各ジャンルで抽出)
出典URL:https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/census/2025-1st-half/66985/
※市場規模推計の値は小数第1位を四捨五入しているため、差分や合計値において、単純計算した数値と合致しない場合があります。

 

<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員

外資系コンサルティングファームを経て、リクルート入社。2012年よりホットペッパービューティーのマーケティング・企画領域に携わり、現在はホットペッパービューティーアカデミー研究員として、美容に関する消費者行動の調査・分析、業界への提言を行っている。
これまでに発表してきた美容業界の調査は200本以上。数字に裏打ちされた洞察力と、現場やメディアでもわかりやすく語れる伝える力に定評がある。業界誌・一般誌・テレビなどメディア取材多数。セミナー登壇や研修講師としても活動中。
プライベートでは小学生2人の母。学校PTAの活動にも全力で取り組み中(2024年度、2025年度 PTA会長)。

 

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