ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子の『データで見る美容業界』‐7
入社〜3ヶ月目までの離職リスクを減らす!エステサロンのための定着メソッド
「せっかく採用したのに、気づいたら辞めてしまった」そんな経験、エステサロンの現場でも少なくはないでしょう。特に新人スタッフの離職は、入社後すぐに起きているわけではなく、入社前の動機・新人研修・3ヶ月目のフォローといった“いくつかの分かれ道”で決まっていることが、最新の調査から見えてきました。
ホットペッパービューティーアカデミーの「美容サロンにおける新人定着・離職の実態調査」(2025年12月)では、初職が美容サロン従事者(美容師、理容師、ネイリスト、エステティシャン、リラクゼーションセラピスト、アイデザイナー)である10代~30代の523人を対象に、入社理由から退職理由、そして現職の満足度までを徹底調査しました!今回はエステサロンでもすぐに活かせる「新人が辞めにくくなる定着の考え方」をお届けします。

文・作表 田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
≪目次≫
1. 新人が早期離職する理由は「なんとなく入社」にあった!
2.若年層スタッフの定着を左右する“入社理由”とは?
3.新人研修で定着に差が出る?“教えていること・教わりたかったこと”のギャップ
4.入社3ヶ月目に8割が感じる「見えない壁」
5.エステ現場でできる、辞めにくい雰囲気づくり
6.まとめ
1. 新人が早期離職する理由は「なんとなく入社」にあった!
<現職者>初職のサロン、入社理由は?

※初職および現在、美容サロン従事者・複数回答(n=381)
現在も美容業界で働いている人にサロンの入社理由を聞くと、「自分が成長できそうだったから」が1位に。上位には、「勤務日数・時間の融通がききやすかったから」「資格取得などのスキルアップの支援があったから」など、比較的はっきりした理由を持って入社している傾向がありました。
<離職者>初職のサロン、入社理由は?

※初職美容サロン、現在他業種/働いていない・複数回答 (n=142)
一方、離職者の入社理由で最も多かったのが「特に理由はない/なんとなく」という回答でした。3位には「学校・保護者に勧められたから」もランクインしており、入社理由においてやや受け身な傾向が見られます。本人の中に“働く理由”が言語化していない状態は、早期離職のリスクになっているのかもしれません。
2. 若年層スタッフの定着を左右する“入社理由”とは?
新人スタッフの定着を考えるうえで、特に注目したいのが若年層の入社理由です。
調査では、20代を中心とした若年層ほど、「どんな環境で、どんな成長ができるか」を重視して入社している傾向が見られます。
<20代>初職のサロン、入社理由は?

※20代の初職および現在、美容サロン従事者・複数回答(n=109)
20代の入社理由では、1位には「自分が成長できそうだったから」、2位には「社会保険(健康保険、年金など)が整備されていたから」がランクイン。労働環境の安定や将来の成長イメージが、入社理由として上位に挙がっています。
これは、「今すぐの条件」だけでなく、この先も安心して働けるかどうかを重視している表れだと言えそうです。若年層の採用において大切なのは、「このサロンで、どんな成長が描けるのか」を本人がイメージできる形で伝えることが大切でしょう。
たとえば、
• 半年後・1年後にできるようになること
• 先輩スタッフの成長ステップ
• 技術や接客をどう磨いていけるのか
こうした情報が具体的であるほど、入社後のギャップは小さくなり、定着につながりやすくなります。
3. 新人研修で定着に差が出る?“教えていること・教わりたかったこと”のギャップ
新人研修はどのサロンでも行われていますが、調査からは「教えている内容」と「新人が知りたかった内容」にはズレがあることがわかります。
初めて勤務したサロンの研修で、教わった内容(技術以外)

初職美容サロン従事者・複数回答(n=523)
初めてのサロン勤務で、研修として教わった内容(技術以外)で多かったのは、「接客スキル(カウンセリングやマナー、言葉遣いなど)」、「電話対応のスキル」、「受付・レジ対応(会計含む)」といった、いわば現場の基本業務でした。これはエステサロンでも共通する、大切な研修項目です。
初めて勤務したサロンの研修で、十分に教えてもらえなかった内容(技術以外)

※初職美容サロン従事者・複数回答(n=523)

※初職美容サロン従事者・複数回答(n=129)
一方で、「もっと教わりたかった内容」として挙がったのが、「経営に関する知識」や、20代では「売上や数字に対する意識」です。つまり新人は、「どう動くか」だけでなく、「なぜこの仕事をするのか」「自分の役割がどこにつながっているのか」を知りたいと感じていることが読み取れます。
【現職者】初めて勤務したサロンの研修で、教わった内容(技術以外)

※初職および現在、美容サロン従事者・複数回答(n=381)
また、「現職者」の新人の頃の研修経験を見ると、仕事に対する姿勢や考え方、サロンの理念理解を学んでいる割合が高い、というデータも示されています。
これは、技術や接客だけでなく、仕事の意味や価値が伝わっている職場ほど定着しやすいことを示唆しているでしょう。
新人研修では、基本業務の指導に加えて、「この仕事がサロン全体にどうつながっているのか」を少しだけでも伝えてあげることが大切です。その積み重ねが、入社後の納得感や定着につながっていきます。
4. 入社3ヶ月目に8割が感じる「見えない壁」
当時、あなたが初めて勤務したサロンで、仕事・職場で戸惑った内容は?

※「仕事・職場で戸惑った経験がある」人・複数回答(n=413)
もっとも多かったのが、「自分が現場で何をすべきか、優先順位が分からなかった」です。
離職者/現職者別

※「仕事・職場で戸惑った経験がある」人・複数回答
また「離職者」と「現職者」との差分が最も大きかったのは「先輩や上司が忙しそうで、質問・相談がしにくかった」が挙げられます。さらに「放っておかれている(十分にフォローされていない)と感じることがあった」についても、「離職者」のほうが「現職者」よりもスコアが上回っていました。
エステサロンでも、「仕事に少し慣れてきた頃」に急に元気がなくなるスタッフに、心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この時期は、
✔ 小さな成長を言葉で伝える
✔ 期待していることを明確にする
✔ 定期的に話す時間をつくる
といった意識的なフォローが、離職防止のカギになりそうです。
5. エステ現場でできる、辞めにくい雰囲気づくり
【現職者/離職者】当時、あなたが初めて勤務したサロンで欲しかった教育・フォロー体制は?

※初職美容サロン従事者(入社3カ月以上経過)・複数回答
「離職者」と「現職者」とに、「当時、あなたが初めて勤務したサロンで欲しかった教育・フォロー体制は?」を聞くと、離職者の1位には、「質問や相談がしやすい職場の雰囲気づくり」がランクイン。現職者との差分がもっとも大きかったのもこちらでした。つまり、「質問できる・相談できる雰囲気」がある職場ほど定着しやすいという裏返しにもなるでしょう。
忙しいエステ現場でも、
• 朝の一言チェックイン
• 施術後のミニ振り返り
• 「困ったら誰に聞くか」を明確にする
など、ちょっとした工夫で空気は変えることができそうです。雰囲気は自然にできるものではなく、仕組みでつくるもの。
新人が「ここなら続けられそう」と感じられる空気づくりが、結果的にサロン全体の安定につながります。
6. まとめ
新人スタッフの離職は、突然起きているようで、実は段階的にサインが出ています。
• 入社前の動機づけ
• 新人研修の質
• 入社3ヶ月目のフォロー
この3つを意識するだけで、エステサロンの定着率は大きく変わります。
「人が辞めないサロン」は、特別なことをしているわけではありません。新人が安心して成長できる道筋を、きちんと用意しているだけ。今日からできる小さな一歩が、未来のサロンづくりにつながっていくでしょう。
【データ出典】
「美容サロンにおける 新人定着・離職の実態調査」
調査発表日:2025年12月26日(火)
調査期間:2025年11月6日(月)~ 11月11日(火)
調査対象:15歳~39歳の男女 • 初職が美容師、理容師、ネイリスト、エステティシャン、リラクゼーションセラピスト、ま つげエクステスタッフのいずれかに該当する人
調査手法:Webアンケート調査(「美容サロン就業実態調査2025」のスクリーニングで条件合致者へ依頼)
調査URL:
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/career/74136/
<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
外資系コンサルティングファームを経て、リクルート入社。2012年よりホットペッパービューティーのマーケティング・企画領域に携わり、現在はホットペッパービューティーアカデミー研究員として、美容に関する消費者行動の調査・分析、業界への提言を行っている。
これまでに発表してきた美容業界の調査は200本以上。数字に裏打ちされた洞察力と、現場やメディアでもわかりやすく語れる伝える力に定評がある。業界誌・一般誌・テレビなどメディア取材多数。セミナー登壇や研修講師としても活動中。
プライベートでは小学生2人の母。学校PTAの活動にも全力で取り組み中(2024年度、2025年度 PTA会長)。
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