ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子の『データで見る美容業界』‐4
物価高が変えた“白髪ケア”事情 6000億円市場の今とこれから
シミやシワ、抜け毛などと並んで、男女問わず悩みの上位にある「白髪」。そのケア方法にいま、“ある変化”が起きています。
背景にあるのは物価高。コスト意識の高まりとともに、サロン染めと自宅染めの併用が進むなど、白髪ケアのスタイルが見直されつつあります。
今回は、ホットペッパービューティーアカデミーが2025年9月に発表した「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」をもとに、その市場の今と今後の可能性についてひも解きます。

文・作表 田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
≪目次≫
1.白髪は男女共通の大きな美容悩み
2.白髪染め市場は6,000億円超の巨大マーケット
3.物価高で増える“自宅染め”の頻度
4.「併用派」の増加。サロンの価値とは?
5.高価格帯の「白髪ぼかし」需要に注目
6.まとめ:白髪は“悩み”であり“チャンス”でもある
1. 白髪は男女共通の大きな美容悩み
白髪は、性別に関わらず多くの人が抱える美容上の悩みです。
ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2024年下期<美容意識・購買行動編>」では、「髪・顔・体への悩み」のなかで白髪への悩みは女性で40.7%、男性でも21.7%と、いずれも2位にランクイン。白髪は、「見た目年齢」にも直結しやすいことも影響しているのでしょう。
髪・顔・体への悩み(TOP5)

出典:「美容センサス2025年下期<美容意識・購買行動編>」
2. 白髪染め市場は6,000億円超の巨大マーケット
2025年時点での白髪染め市場は推計6061億円。このうちサロン染めが4454億円(全体の約7割)、自宅染めが1607億円と捉えています。
<「白髪染め」市場規模推計>

※スクリーニング調査より、平均金額(/月)、人口推計(総務省統計局)からの推計
出典:「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
さらに、白髪染めを始める平均年齢は男性40.3歳、女性42.9歳で、女性は約70歳まで続けるという継続性の高い習慣であることも明らかになっています。
<白髪染めを始めた年齢・白髪染めを続ける年齢>

(数値回答、いずれも矛盾回答を除くサンプルにて算出)
出典:「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
3. 物価高で増える“自宅染め”の頻度
近年の物価高が、白髪ケアの手段にも影響を与えています。
調査では、理美容室での白髪染めを「減らした」と答えた人が15.5%で、「増えた」9.2%を上回る結果に。
一方で、市販品を使った自宅染めは「増えた」19.0%が「減った」11.1%を上回り、コスト重視の動きが読み取れます。
このように、白髪ケアの方法選びにも“価格感度”が強く反映されていると考えます。
<物価高が白髪染めの頻度に与える影響>

(各単一回答、現在実施している白髪対策ベース)
出典:「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
4. 「併用派」の増加。サロンの価値とは?
物価高の中で、自宅染めとサロン染めを使い分ける“併用派”も増加傾向にあります。調査によると、「サロンのみ」が48.3%、「自宅のみ」が25.2%、「併用」が19.1%です。前年と比べて併用層は+3.3ポイント増加しています。
<サロンと自宅の白髪対策状況>

(本調査全体ベース、n=1,031)
出典「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
白髪染めにおいてサロンが選ばれる理由には、「きれいな仕上がり」(78.5%)、「染め残しのなさ」(64.6%)、「髪が傷みにくい」(59.0%)といった技術的信頼や安心感が挙げられており、「価格だけではない選ばれ方」が存在していることがわかります。
<白髪染めに求めることトップ5>

(複数回答、実施者ベース)
出典「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
5. 高価格帯の「白髪ぼかし」需要に注目
白髪ケアは一様ではありません。近年では、白髪を隠すのではなく“活かしてなじませる”という「白髪ぼかし」も注目されています。
ハイライトを活用し、白髪を自然に見せるこの手法は、女性の1回あたりの平均単価が10,880円と高く、特別感のあるケアとして位置づけられています。
<白髪染めに使っている金額(業態×メニュー別)>

(単一回答の加重平均値、現在実施している白髪対策ベース)
出典「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
現在の実施率はまだ1割未満ですが、「知っていて、興味がある」層は男女ともに現状よりもシェアが高く、今後の広がりも期待できます。白髪ケアが「染める」から「魅せる」に進化しつつある動きは、サロンメニューの新しい方向性にもつながるかもしれません。
一方で、「知っているが、やりたくない」という慎重層のシェアも高いため、「白髪ぼかし」という施術名だけでなく、「”白髪染め卒業”デザインカラー」「白髪を”育てる”ハイライト」など、お客さまの悩みに寄り添った魅力あるメニュー名で訴求することもポイントになりそうです。
<「白髪ぼかし/白髪ぼかしハイライト」の認知・実施・興味関心>

出典「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
6. まとめ:白髪は“悩み”であり“チャンス”でもある
白髪ケアは、外見の悩みに直結する一方で、継続率の高いリピーター市場でもあります。
ヘアサロンが主役と思われがちな白髪ケアですが、「頭皮ケア」という視点からは、ドライヘッドスパなどエステサロンでもアプローチできるチャンスもあるでしょう。
年齢や性別にとらわれない、新しい提案のヒントとして、ぜひ活かしてみてください
【データ出典】
ホットペッパービューティーアカデミー
「白髪・グレイヘアに関する意識調査2025」
調査発表日:2025年9月30日(火)
調査期間:
<スクリーニング調査>2025年7月11日(金)~2025年7月13日(日)
<本調査>2025年7月23日(水)~2025年7月25日(金)
調査対象:
<スクリーニング調査>5万人 ※人口動態に基づき性年代を割り付け
<本調査>1,031人(全国20~69歳男女、理美容室の利用頻度が3カ月に1回以上で、
現在白髪があり白髪を気にしている、白髪染めをしている人)
※スクリーニング調査での出現率を基にウェイトバックを実施
出典URL: https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/trade/hair/shiraga/70360/
<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
外資系コンサルティングファームを経て、リクルート入社。2012年よりホットペッパービューティーのマーケティング・企画領域に携わり、現在はホットペッパービューティーアカデミー研究員として、美容に関する消費者行動の調査・分析、業界への提言を行っている。
これまでに発表してきた美容業界の調査は200本以上。数字に裏打ちされた洞察力と、現場やメディアでもわかりやすく語れる伝える力に定評がある。業界誌・一般誌・テレビなどメディア取材多数。セミナー登壇や研修講師としても活動中。
プライベートでは小学生2人の母。学校PTAの活動にも全力で取り組み中(2024年度、2025年度 PTA会長)。
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