人体解剖実習から見えた筋膜・脂肪組織の“つながり”とエステティックへの示唆(豊林 由美子)

2026.03.09 New

 

人体解剖実習から見えた筋膜・脂肪組織の“つながり”とエステティックへの示唆(豊林 由美子)

 

 

 

 

 

1  実習概要

期間:2026年2月10日、11日
場所:Hawaii Medical Research Center(ホノルル)
講師:奥野幸彦先生(外科・形成外科医)/大澤訓永先生(医学修士・治療家・研究者)
主催:解剖実習アカデミー運営会社 株式会社太陽寿

テーマ
人体解剖実習から学ぶ、筋膜・脂肪組織のつながりとエステティックへのヒント

 

2 目的

今回の実習では、顔面および体幹部の解剖を通して、筋膜や脂肪組織がどのようにつながり合っているのかを実際に確認し、その構造的な“つながり”の理解が、エステティック施術の捉え方にどのような気づきを与えてくれるのかを考察することを目的としました。

 

3 実習内容と観察

(1)背面(頭部・頸部・背部)

後頭部から背中にかけては、皮膚(表皮・真皮)と皮下組織の下層に、何層にも重なる筋肉が存在していました。表層に位置する僧帽筋や広背筋は、ご献体が弛緩していたこともあり、想像よりも薄く、その奥には頭板状筋・頭半棘筋・頭最長筋などが幾重にも重なりながら後頭骨へと強固に付着していました。

これらを含めた筋群は教科書上、それぞれの筋が明確に分けて説明されていますが、実際には筋膜を介して連続的につながっており、きれいに「ここからここまで」と区別することは難しい印象で、身体は私たちが思っている以上に“つながり”の中で存在していることを実感しました。

 

(2)前面(頸部・胸部・腹部)

頸部では、広頚筋が皮膚のすぐ下に広がり、とても薄く繊細な構造をしていました。その深層には胸鎖乳突筋があり、その周囲にはリンパ節や血管が複雑に走行しています。

腹部では、腹膜や横隔膜などの強固な筋膜構造が内臓を支えており、脂肪組織も支持機構の一部として役割を担っている様子が観察されました。特に筋膜の厚みと強さは印象的でした。

顔面部では、表情筋とSMAS(表層性筋膜)との間に明確な境界は確認できず、両者は連続した構造として存在していると考えられました。

 

 

4 考察:エステティックへの示唆

エステティックの現場では「表情筋にアプローチする」という表現がよく用いられますが、解剖学的に見ると、実際には筋だけでなく、筋膜を含めた連続的な組織全体に働きかけている可能性が高いと考えられます。

また脂肪組織も、独立した塊として存在しているのではなく、筋膜ネットワークの一部として支持構造に関与しています。

そのため、リフトアップやたるみ改善を考える際には、単一の組織に作用するというよりも、「筋・筋膜・脂肪が一体となったネットワーク」として捉える視点が大切であると感じます。

一方で、深層の支持構造そのものを直接的に変化させることは、エステティックの範囲を超える領域となります。本実習は、施術理論をより丁寧に、そして現実の解剖構造に沿って見直す必要性を示してくれました。

 

5 結論

本報告は解剖実習での観察に基づくものであり、臨床的効果を直接証明するものではありませんが、施術理論を構造的な視点から再整理するための重要なヒントを与えてくれるものといえます。

筋・筋膜・脂肪組織は、はっきりと分断された存在ではなく、互いに連続・融合した支持ネットワークとして存在しています。

エステティック施術をより深く理解するためにも、この“つながり”の視点を大切にしていくことが重要であると考えられます。

 

オリエンテーションの様子

 

研修会場 建物外観

 

 

 

 

豊林 由美子

VIアカデミー(エステティックスクール)代表
元 名古屋美容専門学校 校長
オーストラリア政府認定資格「Diploma of Beauty Therapy」
日本エステティック業協会認定講師
キャリアコンサルタント

 

 

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