機械では真似できない価値──エステティシャンの未来を支えるハンド技術の力
「手に職」という言葉はよく耳にしますが、今になって改めてその価値が再認識される時代がやってきています。
AIの導入が進み、日本では10~20年のうちに49%の仕事がなくなると言われています。その中でも私たちの業界で施すハンド技術は、AIにはできない、これからも長く人々に求められる仕事です。
技術は一生ものです。修得すれば一生その技術を活かし続け、利益を生み出すことができます。機械のように故障したり、新型が出て流行が廃れることもありません。今回は、なぜ今、技術が必要なのかをお伝えしたいと思います。
現在のサロン業界の傾向と機械メニュー
一昨年頃から、毎月有料ウェブサイトなどに掲載をしなくても、集客できていて順調なサロンと、毎月集客に苦しんでいるサロンと、二極化しているように見受けられます。その違いをよく見てみると、順調なサロンは主たるメニューはハンド技術、機械も使用しますが、差別化できる他メニューも全てハンド技術のメニューを強みにしていて、それぞれのメニューにファンがついています。
一方、集客に悩んでいるサロンはというと、これまで機械をメインにしたメニューを中心に取り揃えている傾向がありました。もちろん、機械のメニューが悪いという意味ではありません。即効性のある機械の効果にお客様も喜ばれるでしょう。
しかし、この数年で美容クリニックの敷居が下がり利用する人が増えてきました。「クリニック=医療用」という安心感や、「エステ=勧誘されそう」という印象があり、多少高くてもエステではなくクリニックに行く人が多くなっているのです。
クリニックで実際に施術を行うのは医師ではないことが多いですが、機械はトレーニングを受ければ誰でも操作できるので、施術者にファンがつくというよりも、機械の効果に期待が集まりやすいのです。これはエステサロンでも同じことが言えます。
機械も扱う人のテクニックによって効果に差は出るのですが、お客様はやはり「機械の効果」に注目します。そのため、同じ機械メニューでより良い条件を見つけると、簡単にそちらへ乗り換えてしまいます。つまり、機械メニューでお客様をファン化するのは非常に難しいのです。
ハンド技術の魅力と奥深さ
ではハンド技術はどうでしょうか?例えば同じスクールで同じことを習って修得したとしても、やる人によって全く違うように感じることもあります。手の質感や厚み、柔らかさや密着感、圧の加減やスピードなど、どれか1つでも欠けると心地良さが損なわれるのが技術です。それだけに修得は難しく奥深いものです。人の手はそれぞれ異なるからこそ、その人ならではの手技となるのです。
しかし、一度修得できれば、その技術に、そして自分の手にファンがつきます。そしてその技術は簡単には真似されませんし、壊れたり新型が登場して使えなくなることもありません。どこでも、いつまでも活かすことができるのです。
私がまだ独立するずっと前、20代前半にオーストラリアへワーキングホリデーで1年間留学し、ゴールドコーストのホテル内SPAで働いていた頃のことです。
ある日、宿泊客の女性が私のスウェディッシュマッサージを受けた後に、泣きながらハグしてきました。私は何事かと驚いたのですが、その女性は本場スウェーデンでマッサージをしているセラピストさんで、「世界中でマッサージを受けてきたけど、こんなに気持ち良かったのは初めて!ありがとう!」と伝えてくれたのです。
私は彼女がセラピストだとは知りませんでしたし、いつも通りお話を伺いながらマッサージをしただけでした。それでも、彼女の心に届く施術ができたことに大変嬉しく感動すると同時に、技術は世界共通だと実感しました。
この体験は後に私が、いろんな海外の技術を取り入れながらメソッドを考案することにも繋がっている印象的な出来事です。
このように、ハンド技術はいつでも、どこでも、海外でも通用するのです。
技術を持つためには
技術修得といっても、一度習ったからといってすぐにファンができるわけではありません。先ほども述べたように、自分の手に馴染んだ技術になるためには、とにかく数をこなし練習が必要です。この点において、経験の数ほど確実な成果をもたらすものはありません。
その中でしっかりと効果が出る技術になっているか、習った技術と変わってしまっていないか、などを確認しながら完成度を高めていくと、とても素晴らしい技術をものにすることができます。
技術修得には根気が必要です。習っただけで練習を怠ったり、完成度を高める努力をしなければ、ファンを作るどころかメニュー化すらできず、無駄になってしまいます。
一度技術をものにできた経験は、自分自身の自信にもつながります。さらに、その自信はお客様にも伝わり、ファンが生まれやすくなります。差別化できる技術は、集客にも直結するのです。
今より集客を増やしたいと考えている方は、まさに今こそ技術修得に取り組むことをお勧めします。
私の運営する日本Inner BEAUTY Creation協会では、強みとなる技術メニューの講習を行っています。詳しくは協会ホームページの「学」ページをご覧ください。
サロンプラネット1dayセミナー
ハンド技術とそれに沿った理論を修得できる1dayセミナーをサロンプラネットで開催しています。詳細はホームページのセミナー情報をご覧ください。
増田 由起子
日本Inner BEAUTY Creation協会代表理事
タイ政府認定講師
株式会社HARIS 代表取締役・講師
プロフィール
数々の有名サロン、海外SPAでの経験を経て、2008年に自身のサロンHARISを開業。
その後、タイでさまざまな東洋の伝統療法技術を修得し、2015年にタイ政府公認講師の資格を取得。多くのサロンマネジメントやエステティシャンの育成に携わりながら、2017年より講師として東洋と西洋の理論と技術を融合した根本改善メニューを構築。
2021年、日本Inner BEAUTY Creation協会を設立。2022年に株式会社HARISを創業。2024年、人間科学の学位を取得。「内側からの美容と健康」をコンセプトに、全国各地で講師活動を行っている。
株式会社HARIS
目的別ハーブ「リボンケア」、ハーブティ・ハーブ蒸し事業、サロン導入・各種お問合せ
・各種スクール事業
・セミナー
・ASO 美クラブ事業
・メニュー制作
・サロン経営相談、開業サポート
H P :https://haris.base.ec
お問い合わせメール : masuda@haris-bc.com
当記事は、『エステBプラン Vol.45 Esthetic wired 2025年1月号』に掲載予定でしたが、本サイトにて掲載しております。