ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中公子の『データで見る美容業界』‐8
【顧客満足調査2026】エステサロンの失客理由は「技術」以外にあり!?愛されサロンの離脱防止アクション
「技術には自信があるのに、気づいたらお客さまが離れてしまっていた」 そんな経験、エステサロンの現場でも少なくはないでしょう。 実はお客さまの「サロン離れ」は、技術やメニューへの不満だけではなく、来店前の「予約」や施術中の「ちょっとした接客のズレ」といった“いくつかの落とし穴”でも決まっていることが、最新の調査から見えてきました。
現在、エステサロン業界は大きな転換期を迎えています。ホットペッパービューティーアカデミーの最新市場規模推計では、脱毛サロンの減少が大きく影響し、前年比マイナス588億円に。 市場に逆風が吹く今だからこそ、最も優先すべきは「現在通ってくださっているお客さまを決して手放さないこと」です。今回は女性のジャンル別に潜む「落とし穴」のデータを紐解きながら、明日から実践できる「お客さまから選ばれ続けるためのヒント」をご紹介します 。

文・作表 田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
≪目次≫
1. お客さまの心が離れる「決定的瞬間」は来店前から始まっている?
2.【脱毛編①】「予約の壁」が失客への特急券に!
3.【脱毛編②】「あなたのため」の提案が「押し売り」になっているかも?
4.【フェイシャル編】技術よりシビアに見られる「スタッフの気遣い」
5.【ボディ/痩身編】気まずい空気が一番のストレスに…「会話のミスマッチ」
6.明日からできる!お客様から選ばれ続けるためのNext Action
1. お客さまの心が離れる「決定的瞬間」は来店前から始まっている?
エステサロンのMOTサイクル(サロンの「変更」を決めた瞬間) ※複数回答



※各エステサロン(フェイシャル、ボディ/痩身、脱毛)の変更意向者(女性n=300)
お客さまがサロンに対する印象を決める瞬間を、マーケティング用語で「MOT(Moment Of Truth=真実の瞬間)」と呼びます。図表は、3つのジャンル(フェイシャル、ボディ/痩身、脱毛)で、お客さまが「サロンとの接点」を持つ17~19の場面において「サロンを変えたい」と思った場面のスコアを表示しています。
3つのジャンルに共通して「サロンを変えたい」と思ったトップ3の場面は「施術」「仕上がり確認」「カウンセリング」です。やはりサロンのコアな価値は評価に直結していることが分かります。
しかし、女性のエステ利用では「来店前」の段階でも、失客のサインが潜んでいることが分かっています 。
・全ジャンル共通で「サロンを知る」(ネット等でサロンを調べる)段階での離脱が4位にランクインしています 。
・さらにボディ/痩身や脱毛では「事前に口コミで確認」という場面も5位に入っています 。
定期的な写真の更新や、口コミへの誠実な返信など、来店前における安心感の醸成を怠らないことが、失客を防ぐ第一歩となるのです。
2. 【脱毛編①】「予約の壁」が失客への特急券に!

※エステサロン(脱毛)の変更意向者(女性n=300)
では、ジャンルごとの独自の落とし穴を見ていきましょう 。まずは脱毛サロンからです。 来店前の段階で「嫌だ・不満だ」と思ったことの3位に、「希望日時の予約が取りにくい(26.7%)」という声が挙がっています 。
新規のお客さまへのアピールを優先して、既存のお客さまの予約が取れない状況になっていませんか?お客さまの目がますますシビアになっている今、「行きたい時に予約が取れない」というストレスは、失客の大きな引き金になり得ます 。
3. 【脱毛編②】「あなたのため」の提案が「押し売り」になっているかも?
<エステサロン(脱毛)に対して「嫌だと思ったこと、不満に思ったこと」>(【会計~帰宅後】の段階)

※エステサロン(脱毛)の変更意向者(女性n=300)
さらに脱毛サロンの会計から帰宅後の段階で、注意したいデータがあります。 不満の1位が「商品販売が押しつけがましい(32.3%)」、2位が「サロン都合の商品を勧められた(28.7%)」という結果でした 。
脱毛後の冷却や保湿など、自宅での肌ケアは欠かせませんし、最適な周期で通っていただくためにお得なコースを紹介することもあるでしょう。しかし、スタッフが良かれと思った提案でも、その意味や必要性がお客さま自身に納得されていないと、「(希望していないのに)行けば何かを買わされる(勧誘される)」というネガティブな体験になりかねません 。お客さまを思った提案が、逆にエステ脱毛そのものからのサロン離れを招く原因になってしまうこともあり得るのです。
4.【フェイシャル編】技術よりシビアに見られる「スタッフの気遣い」
<エステサロン(フェイシャル)に対して「嫌だと思ったこと、不満に思ったこと」>(【来店~施術~仕上がり確認】の段階)

※エステサロン(フェイシャル)の変更意向者(女性n=300)
フェイシャルサロンでは、「接客態度」が大きな失客理由になっています。 来店から施術、仕上がり確認の段階での不満トップは、なんと1位「スタッフの気遣いがない(39.7%)」、2位「受付時の対応が雑(36.0%)」でした 。これは、「スタッフの技術が低い・下手(27.0%)」という技術面への不満を大きく上回っています 。
さらに、5位には「スタッフ同士でずっとおしゃべりをしている(25.7%)」もランクインしています 。どれほど最新の機器を導入し、スタッフの技術を磨き上げても、入店時の受付の態度が無愛想だったり、施術中の気遣いが欠けていれば、お客さまの心は離れてしまいます 。
5. 【ボディ/痩身編】気まずい空気が一番のストレスに…「会話のミスマッチ」
<エステサロン(ボディ/痩身)に対して「嫌だと思ったこと、不満に思ったこと」>(【来店~施術~仕上がり確認】の段階)

※エステサロン(ボディ/痩身)の変更意向者(女性n=300)
ボディや痩身サロンでも、フェイシャルと同様に1位は「スタッフの気遣いがない(33.2%)」、2位は「受付時の対応が雑(31.4%)」という結果でした。さらに、3位に「スタッフと話が合わない・会話が続かない(30.4%)」が入っている点に注目しています。
長時間の施術中に会話のテンポが合わなかったり、気まずい沈黙が続いたりといったコミュニケーションの不一致が起きれば、その居心地の悪さは大きなストレスに変わります。お客さまがエステサロンに求めるものは「確実な結果」だけでなく、「非日常の特別な空間での癒やし」もあります 。
6. 明日からできる!お客さまから選ばれ続けるためのNext Action
いかがでしたか?お客さまが何にストレスを感じ、何を求めているのか。その真因に真摯に向き合うことが大切です。 変化の激しい今だからこそ、「今のお客さまを大切にする(サロンを継続いただく)」ためのヒントの例をご紹介します。
【脱毛サロン】
・新規集客で予約枠がいっぱいになり、既存のお客さまの予約が取れない状況になっていないか、予約枠を見直してみましょう 。
・物販や次回予約のアプローチが「今月がお得だから」など一方的な伝え方になっていないか確認しましょう。スタッフ自身が商品を理解し、しっかり「納得感」を持っていただける伝え方をスタッフ間で共有・練習してみてください 。
【フェイシャル、痩身/ボディサロン】
・バックヤードの話し声がフロアに漏れていないか、フロア内での業務連絡が「私語」のように聞こえていないか今一度チェックしてみましょう 。
・「話が合わない」という不満を防ぐため、カルテに「盛り上がった会話のトピック」や「静かに過ごしたい派か、話したい派か」といった情報を記録し、スタッフ間で引き継ぐ仕組みを作ってみるのも良さそうです 。
・その上で、受付でお客さまをお迎えする際の笑顔や声のトーンなど、基本のホスピタリティの底上げを図ってみてください 。
高い技術があるのは大前提であり、その土台の上に乗るホスピタリティと空間づくりこそが、フェイシャル・ボディ/痩身サロンにおけるリピートの鍵です 。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、この「基本の徹底」こそが、どんな環境の変化にも揺るがない、お客さまから選ばれ続けるための最強の武器になるはずです
【データ出典】
ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン顧客満足調査2025【エステサロン編】」(2026年3月)
調査発表日:2026年3月26日(木)
調査期間:2025年10月31日(金)~ 11月14日(金)
調査対象:エステサロン(脱毛、フェイシャル、ボディ/痩身)のリピート意向者1,000人・変更意向者300人 のべ1,300人 ・女性20~59歳、過去1年にエステサロン(フェイシャル)を利用した者
✓ リピート意向者…「また利用したいと思うお店があった」回答者
✓ 変更意向者…利用したサロンで「嫌な思い」をして、「お店を変えた」もしくは「変えようと思った」回答者(本寄稿においては、変更意向者のデータを使用)
調査URL:
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/cs/75954/
<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
外資系コンサルティングファームを経て、リクルート入社。2012年よりホットペッパービューティーのマーケティング・企画領域に携わり、現在はホットペッパービューティーアカデミー研究員として、美容に関する消費者行動の調査・分析、業界への提言を行っている。
これまでに発表してきた美容業界の調査は200本以上。数字に裏打ちされた洞察力と、現場やメディアでもわかりやすく語れる伝える力に定評がある。業界誌・一般誌・テレビなどメディア取材多数。セミナー登壇や研修講師としても活動中。
プライベートでは小学生2人の母。学校PTAの活動にも全力で取り組み中(2024年度、2025年度 PTA会長)。
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