草野由美子の 『エステサロン お役立ちコラム』‐7
静かに離れるお客様の、言葉にならない本音とは? 〜何回かリピートしてくださったお客様が、ピタッと来店されなくなる理由〜
『何回かリピートしてくださったお客様が、ピタッと来店されなくなってしまいました』
―これは、私がエステティシャンからよく相談を受ける内容のひとつです。
質問をする側のエステティシャンとしては、何かひとつの明確な答えがあると思いがちのようですが、お客様にリピートしてもらえない理由はひとつだけではありません。
接客力・カウンセリング力・技術力・提案力・販売力・結果提供力・顧客フォロー力など、エステティシャンに求められる様々なスキルに課題があることが多いものです。
今回は特に、「何回かリピートしてくださったお客様が、ピタッと来店されなくなった」というケースに焦点を当てて考えてみましょう。
読者の皆さまにも、エステティックサロンに限らず、飲食店や美容室、ホテルや旅館など、1回きりでリピートしなかったことや、数回は通ったけれどそれ以降は行かなくなったお店はありませんか?
私も先日、老舗割烹料理店を訪れた際に「次はないな」と感じた経験があります。(笑)
こうした消費者としての自分自身の体験は、サロン経営を考えるうえで多くの気づきを与えてくれます。
お客様の立場になって初めて見えてくるものは、提供する側にいる限り気づきにくいものです。だからこそ、日常のあらゆる場面を「顧客体験」として観察する習慣が、エステティシャンとしての感性を磨くことにつながるのです。
「ただなんとなく」の正体を解剖する
皆さまも、ご自分が行かなくなったお店について、なぜ行かなくなったのかを一度考えてみてください。
技術的に上手くなかった、料理がおいしくなかった、雰囲気が合わなかったなど、さまざまな理由があると思いますが、顧客心理のデータでは、「ただなんとなく行かなくなった」という理由が実は非常に多いのです。
これは決して「特に不快なことは何もなかった」という意味ではありません。通常、人は自分にとって重要ではないことを理論的に考えませんので、よほどの印象がない限り、その理由を言語化しないのです。ところがこの「ただなんとなく」という言葉の裏には、言語化されていない不満や期待外れが積み重なっているのです。
例えば、ネットショッピングで「これいいわ!」と思ったら、送料込みと思っていたのに別途送料がかかるとわかって、「それなら要らないわ」と購入しなかったことはありませんか?
人はこのように、論理的に考えているようで、実は感覚的に費用対効果を瞬時に計算しています。
SNSで美しい写真や動画を見て期待に胸を膨らませて訪れたのに、実際は写真や動画よりも質が低く、内容も物足りなかった——。
そのギャップは「怒り」にはならず、静かな失望として蓄積されて、やがて「なんとなく行かなくなる」という行動に表れます。そしてこの「静かな失望」は、恐ろしいことにそのまま黙って終わるとは限らないのです。
顧客ロイヤリティ協会のグッドマンの第二法則によれば、好意的な口コミが5〜6名に伝わるのに対し、非好意的な口コミは9〜10名、さらに20名以上に広める人も12.3%いるというデータが出ています。
SNSやレビューサイトが当たり前となった今、そのひとりの失望があっという間に何千・何万もの人に拡散されてしまう時代です。
だからこそ、「言語化されない不満」をお客様が口に出す前に、エステティシャンが気づき、サロン側から先に拾い上げて改善し続けることが、長期的な経営の基盤を強化していきます。
「顧客視点の言語化」が、サロン改善の第一歩
「そのお店の何がどうなっていたら、自分はリピーターになっていたか?」——この問いを、お客様の立場に立って徹底的に言語化することが、サロン経営における最も実践的な改善手法のひとつです。
なぜ「言語化」がそれほど重要なのでしょうか。
それは、言葉にしない限り、問題は「なんとなく気になること」のままで終わり、具体的なアクションにつながらないからです。
サロンオーナーやエステティシャンが自分の視点だけで運営を続けると、どうしても「サービス提供側の死角」が生まれます。
【実践】顧客視点の言語化・3ステップ
STEP 1 「自分がお客様だったら」と設定する
自分が初めてそのサロンを訪れるお客様だと仮定します。予約の取りやすさ、受付時の第一印象、施術前のカウンセリング、施術中のコミュニケーション、施術後の提案。
一連の流れを追いながら、「どこかで違和感はなかったか」を振り返ります。
STEP 2 「ここがもう少し◯◯だったら」と具体化する
「なんとなく物足りない」を放置せず、「もう少しこうだったら」という形で言葉にします。
例えば、「受付後の案内がもう少しスムーズだったら」「施術後のアドバイスがもう少し具体的だったら」「次回来店へのご案内がもう少し自然だったら」
このように、一つひとつの場面を細分化して言葉にすることが重要です。
STEP 3 「改善すべきことの優先順位」をつける
言語化した課題をすべて同時に改善しようとすると、どれも中途半端になりがちです。
「お客様の体験に最も影響する部分」から優先して取り組むことで、リピート率の向上に直結する改善ができます。
リピートをやめたお客様が最も感じていた「静かな失望」は、どの場面で起きていましたか?
この「言語化」のプロセスは、スタッフ全員で行うとさらに効果的です。
それぞれの視点から気づきを出し合うことで、一人では見えていなかったサロンの課題が浮かび上がってきます。チームミーティングの場で「自分がお客様だったら何が気になるか」を出し合ってみましょう。
それぞれの役職から見えるお客様の体験は、実は大きく異なります。
異なる視点が交わる場だからこそ、普段は「当たり前」として見過ごしていたことが、初めて課題として浮かび上がることがあります。
「うちのサロンではずっとこうしてきた」という慣習こそ、お客様の「静かな失望」の原因になっていることも少なくありません。
定期的にこのチームミーティングを続けることで、サロン全体のサービス品質が底上げされ、スタッフ一人ひとりの顧客感度も自然と高まっていきます。
そうした日々の小さな違和感を拾い上げ、言葉にして、改善につなげていく。
その積み重ねこそが、長く愛されるサロンの土台になります。ぜひ取り組んでみてくださいね。

草野由美子
ゆうプランド株式会社 代表取締役
JESMA日本エステティックサロン経営学院 学院長
日本エステティック機構
エステティックサロン認証促進アドバイザー
CIDESCOインターナショナルエステティシャン
日本エステティック業協会 教育委員会 委員
小規模・個人サロン向け
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