草野由美子の 『エステサロン お役立ちコラム』

お客様自身も気づいていない、「静かな失望」の正体 〜言語化の先にある、深層の欲求を引き出す「聴く力」〜

2026.07.24 New

 

  草野由美子の 『エステサロン お役立ちコラム』‐8  

 

お客様自身も気づいていない、「静かな失望」の正体 〜言語化の先にある、深層の欲求を引き出す「聴く力」〜

 

施術も接客も、丁寧にやっているつもりなのに、なぜかお客様がピタッと来なくなる——。そんな経験はありませんか?多くの場合、お客様は「特に何が不満だったわけじゃないんです。でも、なんとなく行かなくなっちゃって……」そんな言葉を口にします。

この「言語化されない不満や期待外れ」にサロン側が気づき、先回りして拾い上げていくことが、リピート率を左右する重要なポイントです。そしてもうひとつ、見落とされがちな事実があります。それは、お客様ご自身も、実は自分の本当の気持ちに気づいていないということ。

 

今回は、そのお客様自身も気づいていない本音を、サロンの現場でどう引き出していくのか、具体的にお話ししていきます。

 

「表面的なお悩み」と「深層の欲求」

お客様がエステティックサロンに来店される動機には、実は2つの階層があります。

ひとつは、肌のトラブルや体型、体毛といった「表面的なお悩み」。もうひとつは、そのお悩みが解消した先に得られるかもしれない、お客様にとっての「大切な何か」=「深層の欲求」です。

 

例えば、

「肌のトラブルで、鏡を見るたびに気持ちが沈む」(表面的な悩み)
→「肌が美しくなれば、前向きにいきいきと過ごせるかも」(深層の欲求)

「体型のコンプレックスで、人にどう見られているのか気になって仕方がない」(表面的な悩み)
→「コンプレックスがなくなったら、好きな人に振り向いてもらえるかも」(深層の欲求)

 

このように、リアルなイメージや感情をともなうのが「深層の欲求」です。ところがやっかいなことに、この深層の欲求を、お客様ご自身が言葉にできるケースはあまりありません。

怪我が治ったら病院に行かなくなる患者さんのように、表面的なお悩みがある程度解消すると、お客様は「通う必要性」を感じられなくなってしまいます。「何回かリピートしたのに、ピタッと来店されなくなった」という場合は、実はこの深層の欲求が満たされないまま、置き去りにされていることが少なくありません。

 

深層の欲求を引き出す鍵は、「カウンセリング力」

では、お客様自身も気づいていない「大切な何か」を、どうやって引き出していけばいいのでしょうか。その鍵となるのが、来談者中心療法というカウンセリングの手法です。

《来談者中心療法》

相談者の考え方や感じ方をカウンセラーが共感的に理解していくことで、相談者自身の気づきや成長を促し、問題解決を目指していくカウンセリング手法。/厚生労働省:こころの耳(用語解説)

産業カウンセラーやキャリアカウンセラー、スクールカウンセラーなど、それぞれの専門分野で活用されているカウンセラーが用いるこの手法は、実はエステティックサロンでのカウンセリングにもそのまま応用することができます。

 

ただし、ここで注意していただきたいことがあります。エステティックサロンでは、キャンペーンや商品説明をすることを「カウンセリング」だと勘違いしているサロンが、残念ながら少なくありません。

お客様は、コンサルテーションシートの内容を少し確認しただけで一方的にキャンペーンや商品の話をされると、「本当に今の私にベストな提案なのか?」と、不安を感じてしまいます。その結果、満足度も契約率も継続率も下がってしまうのです。

正しいカウンセリングが行えるようになると、お客様は「自分のことをしっかり理解して提案してくれた」と感じ、満足度・契約率・継続率のすべてが向上します。

 

 

テクニックの前に大切な、5つの「在り方」

接客や販売のためのコミュニケーション技術はたくさんありますが、それを学ぶ前に、まず習得しておきたい5つの「考え方」「在り方」があります。

 

1. 目の前の人に、「興味・関心」を持つ

「このお客様は、普段どんな生活をしているんだろう」「今日はどんな気持ちでいらしたんだろう」そんな純粋な興味が、すべての土台になります。

 

2. 目の前の人に、焦点を合わせる(集中する)

次の予約のことや売上のことを考えながら聴いていると、それはお客様に伝わってしまいます。「今、この瞬間」のお客様だけに意識を向けてみてください。

 

3. 目の前の人を好きになる

どんなお客様にも、必ず魅力的なところがあります。「この方のいいところはどこだろう」と探す気持ちで向き合うと、自然と表情や声のトーンにも柔らかさが出てきます。

 

4. 目の前の人の「良いところ」探しをする

髪型が素敵、話し方が丁寧、笑顔が印象的——。小さなことで構いません。見つけたことを言葉にして伝えると、お客様との距離がぐっと縮まります。

 

5. 陰ぼめをする

本人がいない場所で、その人の良いところを話すこと。「〇〇様、いつも本当に丁寧にスキンケアされていて素敵ですよね」と、スタッフ同士の会話でも意識してみてください。それとなくお客様に伝わることもありますし、何より、日頃からその人の良いところを見る癖がついていきます。

「売上を上げなくちゃ」「買ってもらえるだろうか」と考える前に、まずは目の前のお客様に「興味・関心」を持ってみてください。そうすると、自然と聞きたいことが湧いてきて、カウンセリングに必要な「適切な質問」が自然にできるようになります。

この在り方は、エステティシャンとしてのお仕事だけでなく、プライベートも含めて、すべての人間関係を良くしていく土台になります。

 

この「在り方」が整うと、次はいよいよ実践編です。

 

次号からは、①適切な質問 ②傾聴 ③受容 ④共感 ⑤お客様の自己浄化(カタルシス) ⑥お客様の気づき ⑦プロとしてのコンサルティングという、カウンセリングの具体的なステップを、順を追ってご紹介していきます。

お客様ご自身も気づいていなかった本音が、対話の中でどのように言葉になっていくのか。次号もお楽しみに〜♪

 

 

草野由美子
ゆうプランド株式会社 代表取締役
JESMA日本エステティックサロン経営学院 学院長
日本エステティック機構
エステティックサロン認証促進アドバイザー
CIDESCOインターナショナルエステティシャン
日本エステティック業協会 教育委員会 委員

 

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