草野由美子の 『エステサロン お役立ちコラム』

いま、エステティック業界に何が起きているの?〜規制強化の流れとサロン経営に求められる対策〜

2026.05.10 New

 

  草野由美子の 『エステサロン お役立ちコラム』‐6  

 

いま、エステティック業界に何が起きているの?〜規制強化の流れとサロン経営に求められる対策〜

 

最近、エステティック業界のニュースを見て「なんとなく不安…」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。倒産の報道、大手サロンへの行政処分、そして新しいJIS規格の策定。これらはバラバラな出来事のように見えて、実はひとつの大きな流れでつながっています。

今回は、その流れを時系列で整理しながら、「では、私たちのサロンはどうすればいいの?」というところまでお伝えしていきたいと思います。

 

 

前受金ビジネスの課題が、社会問題として表面化

ここ数年、大手脱毛サロンやエステティックサロンの倒産が相次ぎました。その多くに共通していたのが、「前受金(前払い)ビジネスモデル」の問題です。

契約時に高額なコース料金を一括でいただき、長期間にわたって施術を提供するこのモデルは、経営が成り立っている間はスムーズに機能します。ところが、資金繰りの悪化で経営が破綻した瞬間に、消費者側に「サービスを受けられない」「お金も返ってこない」という形で、大きな被害が及んでしまいます。

この問題は何十年も前から業界内で指摘されていましたが、近年の大規模な倒産をきっかけに、社会的な課題として一気に注目を集めることになりました。

 

 

2024年 行政が本格的に動き始めた 〜消費者委員会での議論から〜

2024年3月18日、内閣府の消費者委員会本会議(第426回)において、エステティック業界の問題が正式な議題として取り上げられました。

会議では、前受金による消費者リスク、契約トラブルの増加、業界全体のガバナンス不足などが指摘されました。そして最終的に、経済産業省と消費者庁に対して「監督・取締りの強化」が求められることになりました。ここから、行政の動きは明らかに加速していきます。

 

 

「エステティックJIS」の策定スタート

こうした流れの前段階で、2023年9月より経済産業省主導で「エステティックJIS(日本産業規格)」の原案策定がスタートしました。これは、サービス品質の標準化・安全性の確保・業界の信頼性向上を目的とした、業界にとって非常に大きな取り組みです。

2026年1月には原案が完成し、現在は消費者庁による法解釈に関する文言の整備など、最終精査が行われており、2026年度内に経済産業省より正式発表が予定されています。

これまで「運営基準が曖昧だった業界」から、「明確な運営基準を持つ業界」へと変わっていく大きな転換点です。

 

 

大手4社への行政処分 〜契約と広告表示の問題〜

そしてこのタイミングで、2026年の年明けから相次いで行われたのが、大手サロン4社への行政対応です。2026年1月、消費者庁はスリムビューティーハウスに対し、特定商取引法違反による業務停止命令を出しました。

問題となったのは「契約解除に関する不実告知」と「迷惑勧誘」です。

エステティックの特定継続的役務契約では、クーリング・オフや中途解約が認められています。ところが、スリムビューティーハウスでは「セットだから解約できない」といった説明が行われていたことが判明し、不実告知と判断されました。

これは、技術の問題ではなく、契約・説明・勧誘のプロセスそのものが問われた事例です。

 

さらに2026年3月には、ソシエ・ワールド、シェイプアップハウス、ミス・パリ・ジェイピーエヌ、スリムビューティーハウスの大手4社が、景品表示法上の広告表示について対応を求められました。

問題の背景にあったのは、ホットペッパービューティーなどに掲載されていた「今だけ」「期間限定」といったクーポン表示です。

ここで注目したいのは、4社の「対応の違い」です。ソシエ・ワールドは、違反と認定される前に自主的な改善策を提示する「確約手続」を行ったため、行政処分の対象とはなりませんでした。一方、残りの3社は「措置命令」、つまり違反が認定された上で再発防止を命じられる処分を受けています。

同じような表示であっても、対応のタイミングや姿勢によって、行政対応の結果が大きく変わる。これが、今回の事例から私たちが学ぶべき最も重要なポイントです。

広告媒体の掲載審査を通過していても、法令への適合責任は最終的に事業者側にあるということです。

 

 

大手の事例は「長男・長女が叱られている姿」

「大手の話だから、うちには関係ない」——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。ここでわかりやすく、ひとつの家庭に置き換えて考えてみましょう。

業界全体をひとつの家庭に例えると、大手サロンはいわば長男や長女の役割を担っています。家庭の中では、長男・長女が叱られる姿を見て、下の子たちが「あ、これはいけないんだ」と学びますよね。それと同じように、大手サロンへの行政処分は、業界全体へのメッセージでもあるのです。

 

ここからは個人の見解ですが、かつては、エステティックTBCやたかの友梨ビューティクリニックが、その長男・長女の役割を担い、サロンとしての運営管理体制を整えてきた経緯があります。

ですから今回は、エステティックTBCやたかの友梨ビューティクリニックについては、行政から指摘される事例がなく、その次の大手企業が対象となったのではないでしょうか。

そしてもうひとつ、今回、違反と認定される前に自主的な改善策を提示する「確約手続」を行ったソシエ・ワールドは、2021年7月にTBCグループの傘下となっています。そのTBCグループの体制のもと、迅速な対応ができたのではないかと感じています。

 

さて、話を戻して、ここでの学びをまとめると、規制は必ず上(大手)から下(小規模・個人)へと広がっていく —— ということです。「広告媒体の審査が通っている」「メーカー資料を使っている」—— それでも、最終的な責任はサロン側にあります。

他社事例を他人事で終わらせず、ここでの学びをぜひ“自分事”として見直してみてくださいね。

 

 

コンプライアンスは、お客様との信頼を守る仕組み

「コンプライアンス」という言葉は、どこか堅くて距離を感じますよね。でも実際には、そんなに特別なことではなく、日々のカウンセリングや契約内容の説明、広告表現の一つひとつに関わる「現場の実務そのもの」です。

サロンとして危ないのは、悪意がなくても違反になってしまうケースがあることです。

「今までこのやり方で問題なかった」「他社も同じようにやっている」こうした感覚の中に、”無知による違反”の芽が潜んでいます。コンプライアンスは「守らないと罰せられるもの」ではなく、お客様との信頼を守る仕組みです。大手サロンが指摘された今こそ、自サロンの体制を見直す絶好のタイミングです。

 

エステティック業界は今、「自由な業界」から「信頼を求められる業界」へと進化する準備が整えられています。これから求められるのは、法令への理解、表現の管理、契約プロセスの透明性 —— そして、お客様に誤解を与えないことを前提とした経営判断です。

 

 

まずは「知ること」から始めましょう

日本エステティック機構では、行政機関からの正確な情報を適時発信しています。まだエステティックサロン認証の取得や事業者登録をされていない方は、ぜひこの機会にご検討ください(登録のみは無料です)。

焦らなくて大丈夫。まず知ることが、第一歩です。お客様に「このサロンで良かった」と思っていただける経営を、一緒に目指していきましょう。

 

 

草野由美子
ゆうプランド株式会社 代表取締役
JESMA日本エステティックサロン経営学院 学院長
日本エステティック機構
エステティックサロン認証促進アドバイザー
CIDESCOインターナショナルエステティシャン
日本エステティック業協会 教育委員会 委員

 

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