エステサロンで「無駄」と感じる時間とは? タイパ時代の滞在価値を考える

2026.09.04 New

 

   ホットペッパービューティーアカデミー研究員  田中公子の『データで見る美容業界』‐11 

 

エステサロンで「無駄」と感じる時間とは? タイパ時代の滞在価値を考える

 

物価高が続くなか、お客さまはサロンに使うお金だけでなく、そこで過ごす時間にも、これまで以上に納得できる価値を求めているのではないでしょうか。

今回は『ホットペッパービューティーアカデミー』が実施した「美容サロン利用における物価高の影響調査」のデータから、エステサロンが「短くする時間」と「大切に残す時間」を考えます。

 

文・作表 田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)

 

≪目次≫

1. エステサロンでも半数超が「値上げを実感」

2.美容サロンの利用でも6割超がタイパを意識

3.「受付後の待ち時間」に対する不満は、エステサロンが最も高い

4.エステで「無駄」と感じる時間は施術の前後に集中

5.エステの滞在時間には「癒し」としての価値もある

6.まとめ: 「待たせない」と「満たす」を両立する

 

 

1.  エステサロンでも半数超が「値上げを実感」

 

2026年9月は、今年度最大規模の値上げラッシュになると報じられるなど、暮らしに身近な商品の価格改定が続いています。家計への負担感が増すなか、美容サロンでも値上げは広がっています。

 

比利用した美容サロンで「値上げがあった・予定されている」割合

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」

 

今回の調査では、1年以内に利用したエステサロンについて、「値上げが行われた」と「今後値上げが予定されている」を合わせた割合は53.9%でした。エステサロン利用者の半数以上が、料金の変更を経験している、または今後の値上げを認識していることになります。

値上げが広がる状況のなか、料金だけではなく、タイパ(タイムパフォーマンス)という時間対効果も今まで以上に注目されています。

 

 

2. 美容サロンの利用でも6割超がタイパを意識

 

調査では、日常生活のさまざまな消費行動について、どの程度タイパを意識するかを尋ねました。

 

各消費行動に対するタイパ意識

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」

 

「非常に意識する」「意識する」「やや意識する」の合計は、「身じたく」が73.8%、「買い物」が71.4%。「美容サロンの利用」も61.5%で、6割を超えています。

ただし、この結果を「お客さまは、できるだけ短時間でサロンを出たい」と読むのは早計です。タイパとは、単純な時間の短さではなく、使った時間に対して、どれだけ満足や納得を得られたかという「時間対効果」を指すからです。

60分の滞在でも、待ち時間が長く、同じ説明を何度も受ければ、時間を無駄にしたと感じる可能性があります。一方で、一定の時間をかけても、施術の目的が明確で、心地よく過ごせれば、「有意義な時間だった」と受け取られるでしょう。

とくにエステサロンには、カウンセリング、着替え、施術、アフターカウンセリングなど、複数の工程があります。大切なのは、工程を一律に短くすることではなく、お客さまにとって意味のある時間になっているかがカギになってきます。

 

 

 3. 「受付後の待ち時間」に対する不満は、エステサロンが最も高い

 

ではサロンでは、具体的にどのような時間が「無駄」と感じられているのでしょうか。

「入店後、受付をしてから席に案内されるまで待つ時間」を無駄と感じる割合をジャンル別に見ると、エステサロンが34.0%で最も高くなりました。リラクゼーションサロンは28.2%、ヘアサロン・美容室は27.5%、ネイルサロンは22.5%、アイサロンは22.4%です。

 

「受付後の待ち時間」を無駄と感じる割合

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」

 

エステサロンでは、予約時間に合わせて来店しても、受付後にカウンセリングや着替えがあり、実際の施術が始まるまでに複数の工程を挟みます。お客さまが施術開始までの流れや目安がわからないと、待ち時間を実際以上に長く感じることもありそうです。

まずは、自サロンでお客さまを待たせている場面がないかお客さまの動きを確認してみましょう。待ち時間そのものを減らすことに加えて、「施術室へのご案内は約5分後です」など、理由や見通しを伝えることも、お客さまの感じ方を変える一つの方法です。

 

 

4.エステで「無駄」と感じる時間は施術の前後に集中

 

エステサロンで「無駄だと感じる時間」TOP5

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」

 

上位に挙がった項目を見ると、施術そのものではなく、施術の前後や合間の時間が中心です。

なかでも、「来店後の施術前カウンセリング、メニュー説明」が28.8%だった点は、単純な短縮とは切り分けて考える必要があります。エステのカウンセリングは、お客さまの悩みや希望を確認し、提供する施術について理解してもらうための大切な時間です。

見直したいのは、カウンセリングの必要性ではなく、情報の重複や説明のわかりにくさです。

予約時に入力した内容を来店後に最初から聞き直す、複数のメニュー説明が続いて自分に必要な情報がわからない、施術との関係が見えない説明が長く続く。こうした状態では、必要なカウンセリングも「無駄な時間」と受け取られかねません。

予約時には基本情報を入力してもらい、来店後は確認と深掘りに絞る。施術前に必要な説明と、施術後に伝えるホームケアの内容を分ける。お客さまの悩みに合わせて、説明する情報に優先順位をつける。カウンセリングを削るのではなく、重複を省き、必要な対話に時間を使うことが大切です。

次回予約や店販の案内も同様です。「今日の状態から見ると、次回はこの時期が目安です」「ご自宅で気をつけたい点は二つです」など、要点を絞った伝え方であれば、お客さまのための情報として受け取られやすくなります。

 

 

  5. エステの滞在時間には「癒し」としての価値もある

 

サロン滞在を「癒しの時間」に近いと感じる割合

出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」

 

サロン滞在を「癒しの時間」に近いと感じる割合は、男女ともエステが7割を超えています。

エステで施術を受け、自分の肌や身体に向き合う時間には「癒し」としての価値がある。一方で、受付後や施術の合間に、理由や見通しがわからないまま待つ時間には、価値を感じにくい。サロンの滞在時間のすべてが、同じように評価されているわけではありません。

エステサロンがタイパに対応するうえで必要なのは、滞在時間全体を短くすることではなく、例えば受付後や施術の合間の待ち時間、説明の重複、会計時の手間は短くできる工夫を、一方で、施術、自分の肌や身体に向き合う時間、日常から離れて過ごす時間としての質の高さの磨き上げではないでしょうか。

エステならではの価値は、短時間で施術を終えることだけではありません。「無駄なく過ごせた」という効率と、「自分のための時間を過ごせた」という充足感を、どちらも設計することが大切です。

 

 

6. まとめ:「待たせない」と「満たす」を両立する

 

値上げが続くなか、お客さまは、支払う金額だけでなく、サロンで過ごす時間にも納得できる価値を求めています。

エステサロンで最初に見直したいのは、施術時間そのものではありません。受付後や施術の合間の待ち時間、説明の重複など、お客さまが意味を見いだしにくい時間です。

一方で、カウンセリングや施術は、目的と価値が伝われば、納得や安心、癒しを生む時間になります。

「待たせない」と「満たす」を両立すること。
それが、価格と時間の両方が厳しく見られる時代に、エステサロンが選ばれ続けるための滞在価値になるのではないでしょうか。

 

【データ出典】

株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」
調査手法:インターネットリサーチ
調査対象:全国男女20-49歳のうち、1年以内のヘアサロン利用者、またはリラク・エステ・アイ(まつげ)・ネイルのいずれかのサロン利用者
有効回答数:3,095人
実施期間:2026年6月5日(金)〜6月8日(月)調査詳細URL:
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/trade/salon/s_consumption/81380/

<寄稿>
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員

外資系コンサルティングファームを経て、リクルート入社。2012年よりホットペッパービューティーのマーケティング・企画領域に携わり、現在はホットペッパービューティーアカデミー研究員として、美容に関する消費者行動の調査・分析、業界への提言を行っている。
これまでに発表してきた美容業界の調査は200本以上。数字に裏打ちされた洞察力と、現場やメディアでもわかりやすく語れる伝える力に定評がある。業界誌・一般誌・テレビなどメディア取材多数。セミナー登壇や研修講師としても活動中。
プライベートでは小学生2人の母。学校PTAの活動にも全力で取り組み中(2024年度、2025年度 PTA会長)。

 

 

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