エステサロン大手「エルセーヌ」を巡り、多額の不適切支出が発覚
サロン取得費用約31億5,000万円、資金還流や架空取引なども調査で指摘
株式会社ANAPホールディングス(東証スタンダード上場)は、主にアパレル事業やビットコインを軸とした新規投資事業を展開しており、グループ会社ではエステ事業やリフレ事業なども手掛けている。
2026年10月26日、ANAPホールディングスは、エステ事業(エルセーヌ)とリフレ事業(リフレーヌ)の取得費用や運営資金などを巡り、旧経営陣による多額の不適切支出や資金還流、架空取引などが確認されたとして、外部専門家による調査チームの調査報告書を公表した。
同報告書によると、ANAPグループの旧経営陣は、エステサロン「エルセーヌ」とリラクゼーションサロン「リフレーヌ」の事業取得にあたり、株式会社TLC(松本倫代表取締役)に対し、「エルセーヌ」13店舗の取得費用として約23億600万円、「リフレーヌ」13店舗の取得費用として約8億4,200万円を支払った。しかし、外部専門家による両事業の評価額は約25億1,000万円で、実際の支払額は評価額を約6億3,800万円上回っていた。
「エルセーヌ」と「リフレーヌ」の運営にあたっては、株式会社AELと株式会社ARFが設立され、ANAPグループの旧経営陣が代表者や役員を務めていた。その後、TLCとの契約形態が事業譲渡から業務提携へと変更され、両社による運営が行われていた。
調査報告書では、ANAPグループの旧経営陣がTLCと密接な関係を築き、同社の印鑑や銀行預金を管理するなど、実質的にTLCの経営を担っていた可能性も指摘されている。
化粧品などの仕入れや資金移動でも不適切な取引を指摘
調査報告書によると、ANAPグループの旧経営陣とTLCの間では、事業取得に関する不適切な支出に加え、化粧品や商材の仕入れ代金、広告・ブランディング費用などを巡る不適切な取引や、不自然な資金移動も確認されたという。
ANAPと「エルセーヌ」、「リフレーヌ」に関しては、文春オンラインが2026年4月、「有名エステ・エルセーヌの顧客情報50万件が盗まれた!運営会社が告訴を準備、ANAPの取締役が関与した疑い」と題する記事を掲載している。
同記事では、ANAPの取締役が、エルセーヌとリフレーヌの事務所が入る東京・上野のTLCに立ち入り、エステ機器やベッド、現金の入った金庫、パソコン、複合機のほか、エルセーヌが保有していた約50万件の顧客情報を持ち去った疑いがあると報じられた。
エルセーヌは「SLEA(スレア)」、リフレーヌは「Re more(リモア)」に名称変更
2025年6月、ANAPホールディングスはTLCとの業務提携を公表した。その後、「エルセーヌ」は「SLEA(スレア)」、「リフレーヌ」は「Re more(リモア)」へと名称が変更された。当初、それぞれ13店舗あったサロンは、その後、「SLEA」が4店舗、「Re more」が3店舗にまで減少したとみられる。
今回の問題は、ANAPホールディングスが主力のアパレル事業の不振を受け、ビットコインを中心とした新規投資事業による経営再建を進める中で発覚したものである。調査報告書では、旧経営陣が美容事業の取得・運営を名目として多額の不適切支出を行ったほか、業務提携先のTLCとの間で、化粧品や美容機器などの取引代金を巡る不正や不自然な資金移動があったと指摘されている。
ANAPホールディングスは、今回の調査結果を踏まえ、関係者に対する法的措置を検討している。
最盛期には全国に100店舗以上を展開した「エルセーヌ」
かつて大手エステティックサロン「エルセーヌ」を運営していた株式会社ビー・エル・シー(中村博史代表取締役)は、営業不振による売上減少に加え、社会保険料などの滞納が続き、日本年金機構による銀行口座の差し押さえを受け、2024年に事業継続を断念した。
同年4月1日には、「エルセーヌ」25店舗と「リフレーヌ」21店舗の計46店舗が株式会社TLCに事業譲渡された。その後、同年12月には、TLCから「エルセーヌ」13店舗と「リフレーヌ」13店舗の計26店舗がANAPホールディングスに譲渡されることとなったが、後に業務提携契約へと変更された。こうした経緯を経て、今回の一連の問題が明らかになった。
「エルセーヌ」は、かつて全国に100店舗以上の直営サロンを展開した、エステティック業界を代表する大手サロンの一つである。それだけに、今回明らかになった問題が今後どのような展開を見せるのか、業界内でも注目されるところである。
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